不安障害
10月も後半。あと2ヶ月で2021年が終わろうとしている。
この一年は去年と同様、家にいることが本当に多かった。
いや、今年の方が家にいたかもしれない。
なぜなら、不安障害だから。
私は今年、生まれて初めて心療内科に行った。
インフルエンザにもならなかった私は今年、大量の薬を毎日飲んでいる。
原因は就活。
大学四年生はほとんどが経験すると思うが、今年の3月から6月後半までの4ヶ月間、毎日毎日自分と社会との戦いだった。
そもそも就活って企業や社会と戦うことなの?
私は何業界で何がしたいという希望がなかった。
とにかく年間休日数や福利厚生の良さそうな企業の説明会を聞き、その中の半分くらいにエントリーシートを提出、適正テストを受けた。
けど、何社も落ちて、中堅私立大学だからかな、目指すところが高すぎるのかな、自分の能力値が低いのかな等、毎回毎回落ちる度に自分を責めた。
ここで落ちた時に、見る目ないなあこの会社!くらいに思えるタフさは私には一切なかった。
純粋に悲しみ、何度もエントリーシートや面接内容を改善した。
一つひとつに時間がかかるタイプで20社ほどしか受けれなかった。
内定を貰えたのは2社。一つは売上高がマクドナルドを越す大手建設商社。もう一つは人事の対応が良かった物流業。
決めたのは後者だ。規模感としては前者の何分の1の企業だ。前者は営業、後者は物流センターでパートの人たちをまとめ、共に働くといった異業種具合。
決してこれがしたいと思って決めた訳では無いけれど、営業は精神的に病んでいたあの頃に選べる選択肢では無かった。
これからどうなるんだろう。この企業でいいのだろうか。マリッジブルーならぬ内々定ブルーに陥り、また地獄の就活を続けるか辞めるか悩んだ。
けれどもう精神の限界。
その頃の私は食欲がなく、ほぼ食べていなかった。少し食べれば嘔吐したこともあった。電車に乗るだけで、吐き気がして特急ではなく鈍行列車しか乗れなかった。
周りは内定を貰って遊んでいる、自分が悪いのか?ネガティブ思考のループに入っていた私の体調は絶不調だった。
そんな中、物流業の会社から電話があり、内々定を承諾。
晴れて就活から開放されたと思った。
けれどそれは違った。そこからまた別の地獄に苛まれることになった。
就活が終わって数週間は少しずつ回復しながら自分を取り戻していたけれど、今度は何もしていない自分に嫌悪感を抱くようになったのだ。
親は朝から晩まで働くのに私はアルバイトもしていない、大学の授業は週一限のみでオンライン。
ほぼ廃人のような自分に嫌気がさして、その気持ちはどんどん大きくなっていた。
バイトを探してなんとかしてその虚無感を埋めようと始めた。バイトをしている時は嫌悪感を埋めれたけれど、それ以外は地獄だった。
毎朝起きる度に「起きてしまった」という感覚になる。日中何をしていても自分は情けないやつ、何も出来ないやつなんだという謎のネガティブ思考が、慰めるポジティブな自分を悠々と先行していった。
眠る時が一番幸せだった。もう今日は何しなくていいんだ、そう思うと気が楽だったからだ。
私は母と暮らしているけれど母と話すのでさえ、できない時もあった。寂しいのに1人にして欲しかった。全てが怖くなり、外出もできなくなった。
バイトだけは絶対に行かないといけないという義務感があり、普通の振りをして、1度も休んだことは無い。
この人が変わってしまったんじゃないかと思うおかしい状態を対処する為に、心療内科へ行った。
全ての話を聞いてもらい、薬をもらった。
そこから何度転院しただろう。何度薬を変えただろう。
とにかく自分に合う先生と薬を求めて転々とした。
あの病院ツアーはかなりキツかった。
自分に合う薬を見つけた頃、よく効いた。
元気になって母からも顔色が違うと言われた。
あの心が凍る感覚、全てが怖くなる感覚が薬のおかげで、不思議とどこかへ行くのだ。
ただ、薬の副作用が強すぎることを伝えると、「じゃあ抜きますね」と言われ、抜かれた瞬間、また地獄へ舞い戻った。
薬がないと生きていけないんだ、もうこれ以上いい薬とは出会えないんだ。
何度、大声をあげて泣いただろう。売り場で暴れる子供のような声量で、自分の情けなさに泣き叫んだ。ベッドに這いつくばって、ホラー映画を見てるかのような声量で、絶望感に打ちひしがれ、泣いた。母に申し訳ないと思って、泣いた。
病院を転々とし、ようやく合う先生、合う薬(副作用の弱い、でも抗不安の機能は果たしてくれる)に出逢えた。
今はそれを飲んで、ほとんどその症状が出ることは無い。と言っても予期不安はまだまだあって、またあの地獄が来ないか、将来働く時にこうなったら会社を辞めないといけないんじゃないか、など常に薄い不安と戦っている。
不安障害になってから、ずっとずっと不安障害についてのYouTubeや本を見たり読んだりした。それをしてたら、症状が強く出た時はすぐに辞めた。
それでも、症状がマシな時は常に不安障害についてしらみ潰しに調べた。
調べて知ることによって、不安を取り除けると信じていたからだ。
あと自己肯定感を高めるために何冊も本を読んだ。
日光を浴びたり、ヨガをしたり、マインドフルネスをしたりあらゆることをした。
つまり今まで経験したことの無い苦しさに苦しみ、今まで意識したことの無いことを意識し、今まで考えも及ばなかったことを考え、挑戦するようになったのだ。
この不安障害は決してネガティブなものばかりではなかったのだ。